世界の銘靴を取り扱う中で私達が得たものを、
Trading Post Originalにフィードバックしたい。
私達のこだわりと、職人の知恵のぶつかり合いによって、
この度[セントラル靴]製、『Trading Post Original』に新シリーズが登場致します。
前回の記事はこちらからご覧ください。
これに向けて私たちが取り掛かった事が、「最高の木型作成」でした。
今回新たに登場する[66]ラストは、既存の[N37]ラストの改良版ではなく、
ゼロからの開発となりました。
木型職人の腕、[セントラル靴]の知恵に頼らずして最高の木型が実現しないのは無論
最も必要なのは、Trading Post Originalを日頃ご愛用下さるお客様のお声や、
それを反映させる為の試着者と、試着の数です。
今回、ゼロベースでの木型作成に向け
トレーディングポストのほぼ全スタッフが試着をしています。
試着回数の多いスタッフは、5種ものプロトタイプを試着し意見して参りました。
それぞれのスタッフが、今まで接したお客様から頂いたお言葉を元に[66]ラストと向き合い、
不特定多数の足での履き心地をイメージしました。
上段[66]ラスト、下段[N37]ラスト
下段、既存の[N37]ラストは、甲全体にゆとりがある「旧き良き木型設計」となっています。
ゆえに所謂、古典的・英国調なシルエットとして、多くの方々に受け入れて頂きました。
対して[66]ラストは、「ビスポーク靴」等特有の「足の厚み≒靴の厚み」となるような、
一の甲の低いシルエットを追及しています。
これによるメリットの一つは、甲部分のホールド感向上。
二つ目は、一の甲から二の甲にかけて強くせり上がり、足の曲線があらわになる事での
靴の存在感・高級感の増幅。
【一行改】
しかし、二の甲までもを低くし過ぎることは、かえってフィット感の破綻につながります。
単に、窮屈になるという事です。
一の甲を低く、二の甲は削り過ぎない。
両者の描く曲線が最もバランスよく交差する地点を見つける事が、
[66]ラストの開発において、頭を悩ませる部分となりました。
甲部分での抑えが良く効けば、ボールジョイントが痛みなくフィットし、
捨て寸も充分に取れる。
一般には、捨て寸が長いほどエレガントなスタイルに向き、
短いほど、クラシックなムードになると言われています。
[66]ラストはどういったシーンにも対応できるよう、普遍的なバランスに致しました。
ありがちな「長すぎず、短すぎず」なのかもしれません。
しかし、甲の低さを見れば、無難な量産品などとはまるで思えない仕上がりになっています。
細身のパンツでシャープに見せる日も、スタンダードなパンツをワンクッションで履く日も、
違和感・嫌味のない靴の存在感がある。
私たち(靴好き)が気を引き締めて選びたい一足は、きっとそういう物であるはずです。
そんな私たちの想いや、お客様からのお声を元に設定したトゥの丸さ・長さは
永く廃れる事のないスタイルを約束します。
当然ですが、日本人は欧米人よりも踵が小さいという事も熟慮しています。
聞けば、やはり踵にもかなりの拘りを詰めたとのこと。
踵が小さめな筆者も実際に試着を致しましたが、
「中での圧迫感は痛くないが、履き口が狭く抜けずらい。」
「(自身の踵が小さいとはいえ)むやみにサイズを下げたり、
ただヒールがきついだけの木型では至る所に痛みがでるが
適切なサイズを選べば、[66]ラストはかなり快適に歩くことができる。」
このような感想を、抱いています。
深さ、丸さ、履き口の広さ等の諸要素を無視し、
一口に踵と表現するのが、如何にナンセンスなのかを教えられました。
セントラル靴特有の硬めの月型芯との組み合わせがあれば、
長期間履いてもホールド感を失わず、靴としての機能を存分に果たしてくれるでしょう。
また、木型の前半分・後半分での中心線の分化を採用し、
よりフィット感の高い靴に仕上がるよう致しました。
これは、他のニュースでもご紹介したことがある「腕利きの職人にしか成せない釣り込み」を要するもの。
写真は、過去何足もの靴を成形してきた[N37]ラスト。
革を巻かれ、釘で打たれ、平面の革を靴の形にしてきました。
[66]ラストが今後、この写真の様にアジが出ていくのが今から楽しみです。
[N37]ラストの靴は、今後もトレーディングポスト全店にて展開予定です。
古典的・英国的なクラシックを貫く[N37]ラストと
伝統を重んじながら、その魅力は未知数である[66]ラスト
両木型の靴が店頭に並ぶことになります。
さて次回は、[66]ラストを用いた新作靴をご紹介致します。
Trading Post