自分好みの革靴を探す上で、大きな手掛かりとなり得るのが所謂「製法」。
最も単純かつ安価なセメント(圧着)製法に始まり、グッドイヤー、マッケイ、ノルウィージャン、ボロネーゼ、ステッチダウンetc……
スニーカー等をメインに使用される製法や、2つ以上の製法を複合的に使う場合などもあり、その数は膨大といっても良いほど。
今現在も様々な企業が、より良い履き心地を目指して研究を続けており、もしかしたら今後は新技術が革靴の世界を大きく変える事になるかもしれません。
ともあれ、ひとまず現在のトレーディングポストで取り扱っている革靴の大部分を占める製法は大きく分けてこの2つ。
ひとつがグッドイヤーウェルト製法。
そしてもうひとつが今回の主役、マッケイ製法です。
マッケイ製法とは
「甲革(アッパー)と、インソール・アウトソールをミシンで縫い付ける」という極めてシンプルな製法です。
問屋制家内工業が主流だった靴製造は、18世紀中ごろから19世紀に入ると産業革命を経てイギリスを中心に一気に機械化され、大量生産の時代にシフトします。
そして1856年、アメリカのブレイク氏が靴用のミシンを開発。その権利をマッケイ氏が買取り紆余曲折を経て現代のマッケイ製法へ至る。大雑把ですが、そういった歴史的な流れがあります。
ヨーロッパでは同様の製法を「ブレイク製法」と呼ぶ事が多いのはこういった歴史があった為ですね。
マッケイ製法のメリット
メリットは大きく分けて2つ。
ソールを薄く作れる為、返りが良く柔らかい履き心地に。
そしてコバを張り出させる必要がない為、全体のシルエットが絞られてエレガントに。
この2点、実際にマッケイ製法の靴を見ながら確認してみましょう。
CARMINA 品番:580917
- 素材:RUSTIC CALF
- 色:BLACK
- ラスト: UETAM
- 底材:TOMIR
- 価格:¥71,500(税込)
まずは軽快な歩き心地について見ていきます。
写真のように、横から見るとソールが薄い事が良くわかります。
「中モノ」と呼ばれる副資材、例えばグッドイヤーウェルト製法であればコルクやリブテープ、そしてウエルトなどの部材が必要になってきますが、ほとんどダイレクトにソールを縫い付けられるマッケイ製法にはそれらが必要ありません。
その分、薄く・軽くできるんですね。
一般的なマッケイ靴は、靴の中にソールとの縫い合わせ部分が見える物が多いです。
こちらのカルミーナのように、薄い全敷きを貼って縫い目を覆う方法もあります。
やや武骨な縫い糸を隠す事でより美しく仕上がり、さらに縫い糸が露出しない為、さらりとした足当りになります。
こちらのカルミーナには「RUSTIC CALF」という非常にやわらかな素材が使用されています。
マッケイ製法だとしなやかな履き心地を狙って、こういったソフトな素材が良く使われ、実際に相性も抜群です。
グッドイヤー製法ではつり込みなどの工程で強い力が加わる為、使用が難しいとされるような繊細な素材でもマッケイなら可能。
この辺りも大きなメリットですね。
もちろんソールが薄い事はメリットだけでなくデメリットも。
薄い分、どうしてもソール交換までのサイクルが短かかったり、路面からの雨の染み込み等が早くなりがちです。
持ち味である軽快さは多少犠牲になってしまいますが、前半分ゴムのメリーソールにカスタムしてしまうのも解決策の一つですね。
今回ご紹介のカルミーナのタッセルローファーは前半分ゴムのソールが標準仕様。
ヒール部分もゴムなのですべりにくい仕上がり。
次に、マッケイ製法だからこそできるエレガントなシルエットを見ていきましょう。
大きな特徴としてはやはりコバの張り出しをなくす事ができるというのがポイント。
かなりボリュームを抑えたシルエットが可能になり、レディース靴のような華奢な靴も製作できるようになります。
その為、華やかなデザインと相性が良く、より軽やかさと高級感を両立した雰囲気を出しやすいですね。
今回のタッセルローファーなんかも、グッドイヤーウェルト製法のそれとは大きく違った、華やかで繊細な雰囲気となっています。
コバの張り出しがなく、アッパーのアウトラインがほぼそのまま靴全体のシルエットに
ソールと縫い合わせる必要がある為、グッドイヤーウェルト製法ではコバが外側に張り出します
もちろんグッドイヤーウェルト製法のどっしりとした重厚感も魅力的ですが、マッケイ製法であればウェルトをつけてコバを出し、グッドイヤーウェルト製法のようなルックスにする事も可能です。
ただしその逆、グッドイヤーウェルト製法をマッケイ製法と同様のルックスにする事はできません。
グッドイヤーウェルト製法の制約の中、出来る限りエレガントに魅せようとしたのがグッドイヤーウェルト製法をベースに、ウエスト部分のみをマッケイ製法というハイブリッド(トレーディングポストオリジナルのプレステージラインで採用されていますね)ですが、それはまた別の機会に。
デザインの幅が広く、自由な発想を形にできるのがマッケイ製法の大きなメリットと言えるでしょう。
マッケイ製法はグッドイヤーウェルト製法の下位互換ではない
「高級革靴=グッドイヤーウェルト製法」の図式が一般化しているせいか、比較すると耐久性に劣るマッケイ製法を「チープな製法」と見る向きがあります。
たしかにグッドイヤーウェルト製法よりも大量生産に適正がある為、安価なモデルに採用されやすく、大掛かりな修理が可能な回数が少ないのは事実です。
ただし、何を良しとするかは「何を基準に見るか」です。
マッケイ製法視点でみればグッドイヤーウェルト製法は手間も時間もかかり重くて硬い靴。つまりこの二つを比較評価するのはナンセンスです。
それぞれの製法にそれぞれの良いトコロがあるのです。
改めて、「マッケイ製法」いかがだったでしょうか?
軽快さとエレガントを併せ持つ、とっても優雅な製法は特に春夏の装いにも好相性です。
この機会に是非足入れしてみて下さい。
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