まずはストレートチップ。
それからセミブローグやパンチドキャップトウ。
あるいはウイングチップ、もしくはスリップオンシューズ。
多くの場合、革靴を購入する順番はこのようなものかもしれません。
そこにモンクストラップやチャッカブーツも加えると、様々なシーンやコーディネートにひと通り対応できます。
さて、今回はそこにもうひとつ、こちらはいかがでしょうか?
ホールカット。
一枚革。
かざり無し。
究極のプレーントウですね。
冒頭で触れたように、ストレートチップ以降に購入する靴は、だんだん装飾が増える傾向があるのですが、こちらはその逆。
いたってシンプル。
かざりが無いという事は、何と合わせてもケンカにならない。
かぶらない。
ということで、二足目に選ぶデザインとしても、あらたにワードローブに加える靴としてもおすすめできるホールカットなのですが、継ぎ目がないデザインというのは、靴の形にするのが難しいもの。
作り手のパターンの引き方や製靴のセンスおよび技術レベルを如実に物語るデザインでもあります。
今回ご紹介しているこちらはスペイン、地中海に浮かぶマヨルカ島のシューメーカー CARMINA(カルミーナ)製。
その仕上がりやいかに!?
たとえば ここに注目してみると・・・
すぼまった履き口。
それに この形。
上に向かってすぼまっていく洋ナシ型の踵。
さらに ここにも注目です。
土踏まず部のくびれ。
後半分のこれらのポイントが連動して足をしっかり固定できるようになっています。
まずは土踏まずを下から持ち上げることにより、靴の中で足が前へずれないようにし、さらに踵の丸みにフィットした形状のヒールカウンターが足の抜けを防ぐというわけです。
また、前半分の小指側に空間を確保。
少し膨らみをもたせたこの形状は CARMINA の中でも「INCA」という木型に強くでている特徴で、足の外側にかかる負担をうまく逃がしてくれます。
そしてきれいな曲線がトウへ向けて流れ落ちる。
ショートなラウンドがエレガント!
最後にアイレット数も全体の調和には欠かせません。
5対だと詰まった感じになるのですが、4対だとちょうど良い間隔で違和感なし。
それにしても、よくぞ一枚の革をこのような複雑な曲面をもつ立体にできるものですね。
おおらかだけど、締めるところは締める。
抑揚がついていて単調にならず、目も楽しませてくれます。
見た目はシンプルですが、長年にわたり地中海に抱かれ培われたセンスと技術がギュッと凝縮されていっぱいに詰まっています。
ぜひこの感触をご体感いただきたいところ。
ちなみにマヨルカ島は、地中海の楽園とも呼ばれ、晴天の日が年間300日以上であるとか。
太陽との快適な付き合い方も教えていただきたいものです……
- 素材:Freudemberg
- 色:Negro
- 底材:Single Leather
- 製法:Goodyear
- 価格:¥80,300(税込)